ユネスコ本部の主なみどころ

令和4年8月3日

ユネスコ本部の主なみどころ

 ユネスコ本部庁舎は、3名の建築家(Marcel Breuer(米国)、Pier-Luigi Nervi(イタリア)、Bernard Zehrfuss(仏))のデザインにより、1958年に完成した。敷地の周辺には、今も現存する陸軍士官学校(Ecole militaire)、廃兵院(Les Invalides)の他、かつて練兵場だったシャン・ド・マルス公園(エッフェル塔前の長方形の公園)があり、ユネスコ本部の敷地も、かつてはルイ15世の騎兵隊の兵舎だったといわれる。
 
 パリの近代的公共建築としては最初に建造されたもので、有名なポンピドー・センター(国立近代美術館:1977年開館)より歴史は古い。本部内には、世界各国の著名な芸術家の作品が点在しており、みどころは多い。
 
●日本庭園
 日系アメリカ人イサム・ノグチ氏(1904-1988:父は日本人、母はアメリカ人)の作。日本政府の寄付により1958年に建設された。総面積1700平米の敷地の中に、建設当時日本から持ち込まれた桜、梅、椿、竹などの樹木、80トンもの大小の庭石、小川、池、橋、季節の花々が配置され、自然と人類の調和を表現している。作庭には、京都の16代目佐野藤右衛門氏、徳島県の鈴江基倫氏、京都の野口信一氏らの造園家が関与した。毎年春には桜が満開となる。正式名は、「平和の庭園(Garden of Peace )」で、通称日本庭園とよばれる。
 入り口部分の滝は、岩に刻まれた模様が水に映ると「和」という字に見えるため、「和の滝」と呼ばれる(「和」の古文字をアレンジ)。
 
●瞑想の空間
 日本の建築家安藤忠雄氏(1941-)の作品で、日本の民間からの寄付金(当時5百万フランスフラン)により1995年に建築された。日本庭園の横にあり、33平米のコンクリートの円筒状の構造をしている。中は空洞になっており、床に使用されている御影石は、1945年8月6日の広島原爆で被爆した原爆ドーム近くの橋のもの。
 
●長崎の天使
 日本庭園内に、高さ40センチメートルの天使の頭像がある。これは、元々、長崎の浦上天主堂の正面にあったもので、1945年8月9日の長崎への原子爆弾の被害を奇跡的に免れたもの。1976年、ユネスコの30周年を記念して長崎市より寄贈された。
 
●寛容の広場
 1995年11月4日に暗殺されたイスラエル元首相ラビン氏(1995年にノーベル平和賞受賞)に敬意を表し、イスラエル政府の寄贈により1996年にイスラエル人キャラヴァン氏の手によりつくられた。ユネスコ憲章前文の有名な書き出し(「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」)が10の異なる言語で彫り込まれた石碑と、オリーヴの木が配置されている。
 
●第一会議場
 ユネスコ内最大の会議場で、座席数1350席。2年に1回開催される総会の主会議場となる他、セミナー、シンポジウム、音楽・演劇等の文化事業など、様々な目的に使用されている。1974年に凱旋門近くのパレ・ド・コングレ国際会議場が出来るまではパリで最大の会議場だった。

●イカロスの墜落
 パブロ・ピカソ氏の1958年作の壁画。第一会議場前のホールの80平米の壁全面を覆う40枚のパネルから構成される。ピカソによれば、泳いでいる人々をモチーフにしたとのこと。壁画の前方上部に太い梁があり、鑑賞の邪魔となるためか、ピカソは壁画の場所が気に入らず、壁画には署名しなかったと言われる。