ユネスコで活躍する日本人職員 田伏 翔一(たぶし・しょういち)さん
令和6年3月29日
- これまでのご経歴と現在のお仕事の内容についてお教えください。
現在の仕事は、他の国際機関やUNESCOの他の部署、さらに世界中のUNESCOのフィールドオフィスとやり取りをしながら、多くの国で様々な防災プロジェクトを実施しています。その成果を他の国に横展開することで、世界各国の防災力を高めることを目指しています。
気候変動問題で各国の防災への関心が高まる中、既に多くの国連機関・国際機関が様々な角度から防災の取り組みを進めています。
そのような中で、特に我々防災ユニットは、他の機関とは異なり「サイエンス」という部局に位置付けられているため、様々な新しいサイエンス、テクノロジー、イノベーション(例えばAI分析を活用した途上国への政策提案等)を活用した防災プロジェクトの企画を打ち出しています。
私の経歴としては、関西の出身で、直接私自身が被災したわけではありませんが、幼いころに親戚(兵庫県の寺)が1995年の阪神・淡路大震災に被災し、震災の記憶が強く残っています。大学で都市工学を学んだ後、2008年に国土交通省に建築技官として入省しました。その後、東日本大震災の対応や、建築基準法の改正、住宅宿泊事業法(民泊法)の制定、建築分野のデジタル技術の活用促進など様々な業務に携わりました。また、2017年から2年間、内閣府地方創生推進事務局に出向し、日本全国の地方創生プロジェクトの応援を行いました。
防災という行政側の役割が非常に大きい分野であるため、このような行政官としてのバックグラウンドは現在の業務に非常に役立っています。
- ユネスコ(国際機関)でのお仕事を目指されたきっかけをお教えください。
また、これまで日本の行政官として、日本の実情や知見を日々学びながら様々な政策立案に携わってきましたが、一方で、政策立案時に海外基準との比較を行うだけでなく、海外発の新たな建築技術や民泊などの新しいサービスなど、日々進化する海外の実情に目を向けることが不可欠になってきました。並行して、業務において地方創生分野に関わることで、日本国内の様々な実情を知ることができた結果、日本での知見を活かし、次は海外に目を向けて自身の視野を広げてみようと考えはじめました。
- ユネスコで働くやりがい・大変さはどの様なところにあるのでしょうか。
また、実際に国際機関で業務をしてみると、日本がいかに多くの種類の自然災害を経験していて、かつそれらに対し色々な取り組みがされてきたのか、また普段何気なく享受している様々な防災インフラは他国ではありえないレベルにある、と自身の国を見つめなおすきっかけとなりました。
一方で、国際機関の職員はそれぞれ国籍や育った環境、専門分野などバックグラウンドが大きく異なり、働き方への考え方も異なるため、都度それぞれの認識を確認しながら仕事を行う必要があります。日本の常識が通用しないことも多々あり、一定の信頼関係を気付き円滑に業務を行うためには、日本以上に日々のコミュニケーションの重要性を痛感しています。幸いにして、私は同じ執務室に複数の同僚がおり、多くの方がこの部屋を訪れるので、この点は非常に助かっています。
また、苦労という点では何より家族の問題もあり、家族とともにフランスに移住しましたが、妻や子供がフランスに慣れ、買い物や学校、病院など一通り経験をして、生活に慣れるまでは色々と苦労がありました。ただ、この点家族はパリの生活に現状とても満足しているようで、現在は苦労はしておりません。
- これからユネスコでの勤務を目指す方へのメッセージをお願いいたします。