ユネスコで活躍する日本人職員 青山 愛(あおやま・めぐみ)さん
令和6年5月3日
- これまでのご経歴と現在のお仕事の内容についてお教えください。
現在は、ユネスコの情報・コミュニケーション局のメディア開発部署に所属しており、人道危機や災害・緊急時に、メディアを支援するプロジェクトを担当しています。例えば、人道危機や人々が避難を余儀なくされる際、メディアは、情報の権利や表現の自由を行使するために不可欠です。メディアからの事実に基づく公平かつ的確な情報は、時には人々の生活や命を守ることに繋がります。ユネスコは、そんな危機時に、メディアが正確・中立・公正な情報を伝え続けられるような支援を行っています。
私のキャリアは日本のテレビ局のアナウンサーから始まり、国連の難民を扱う機関、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を経て、今のユネスコへと続いています。今の部署での仕事は、自身のメディアのバックグランドと、人道危機対応や難民支援での経験を上手く組み合わせることができ、やりがいを感じています。
- ユネスコ(国際機関)でのお仕事を目指されたきっかけをお教えください。
幼少期を過ごしたアメリカでは、白人社会の中で、人種の壁を前に葛藤した経験があります。その経験から、「異なる他者への理解」をどう深めることができるのかということを仕事のテーマの一つとして考えてきました。ユネスコの活動はまさに、異なる文化間の相互理解を深め,寛容,対話,協力を重んじる異文化間交流を発展させ,世界の平和と安全に結びつけることを目標としています。このユネスコのミッションに強く共感を覚えました。そして、世界で故郷を追われる人が史上最多となり、世界各地で戦火が止まない今、より一層必要な取り組みだと実感しています。
- ユネスコで働くやりがい・大変さはどの様なところにあるのでしょうか?
やはり、170カ国以上から来る同僚たちと、国境や人種を越え、地球をひとつの社会として捉えながら様々な国際問題に取り組んでいける環境は、国連機関ならではのやりがいかと思います。また、ユネスコは教育や文化面での活動がよく知られていると思いますが、私のいる情報・コミュニケーション局では、言論や報道の自由、ジャーナリストの安全、メディアリテラシーなど、国連機関の中でもユネスコのみが扱っている、あるいは、リードしているテーマに携わることができるので、とても価値があると感じています。
大変なことはたくさんありますが、やはり、本部機能が強い組織なので、様々な部署や各国の政府との調整作業に時間がかかります。人道支援が必要な際には、機動力を持って対応することが大切です。そういう意味では、どれだけスマートに物事を動かしていけるかというのが求められますし、チャレンジングなところであるともいえます。あと、職場でも会議でも英語とフランス語が交互に使われるので、今は、フランス語の猛勉強中です。
- これからユネスコでの勤務を目指す方へのメッセージをお願いいたします。
国連機関で生き残っていくうえで、私は、スキルや経験を「T字型」に構築していくことを心掛けています。どんな組織や仕事にも必要で、通用する「横軸のスキル」、例えばコミュニケーションや人間関係を構築していくスキルなど、と、「縦に深堀りしていく専門性や知識」。この二つの軸を掛け合わせていくことで、色々な現場に適応しながら国連でのキャリアを積み上げていきたいと考えています。
また、当たり前ですが、高く掲げる理想と、実際の目の前にある現実の間には距離があります。簡単には解決できない、複雑で、時には壮大な問題に取り組むからこそ、壁にぶつかったり、理不尽さやもどかしさを感じることが多々あります。それでも、実現したい社会への理想を持ち続けること、あるいは見失わないことが、日々、この機関で働くうえで、必要なことのように感じます。自分個人で成し遂げたいこと、というよりも、みなさんが、ユネスコのような国連機関で貢献したい、あるいは実現したい世界はどんなものなのかを考えてみるのもいいかもしれません。