ユネスコで活躍する日本人職員 青山 惠津子(あおやま・えつこ)さん
令和8年5月19日
- これまでのご経歴と現在のお仕事の内容についてお教えください。
文部科学省からの派遣で、現在パリのユネスコ本部にて勤務しています。
文部科学省では、初等中等教育や生涯学習など教育政策を扱う複数の部署で業務を経験したのち、文化庁において、文化審議会世界文化遺産部会の運営など、日本の世界文化遺産に関する業務に携わっていました。
そして現在、ユネスコ文化局世界遺産センターのアジア・パシフィックユニットにて勤務しています。具体的には、日本・モンゴル・タイ・インドネシア・マレーシア・フィリピン・東ティモール・ブルネイの8カ国に所在する世界遺産の保全に携わり、日々、各国政府の担当者やユネスコの諮問機関と連携しながら業務を行っています。
業務内容は多岐にわたりますが、中心となるのは、年に一回開催される世界遺産委員会に向けた準備です。同委員会では、世界遺産の新規登録に加え、既存の世界遺産の保全状況審査が行われるのですが、前述の担当国における世界遺産の保全状況について、レポートを作成することが主な業務です。そのレポート作成にあたっては、各国から提出される膨大な資料をもとに多角的な分析を行い、諮問機関の専門家と協議しながら、保全状況の改善に向けた方策を勧告として取りまとめます。携わった勧告が委員会で採択された瞬間には、大きな達成感とともに、深い感慨を覚えました。過去から受け継がれてきた遺産を、現代を生きる私たちが守り、未来へと継承していく、その一助を担えること、そして過去から未来へと連なる長い時間に思いを馳せながら仕事ができることに、感謝をしています。
- ユネスコ(国際機関)でのお仕事を目指されたきっかけをお教えください。
文部科学省入省1年目にOECDの会議に出席したことがきっかけです。その際に、各国が異なる立場から多様な主張を展開しながらも、議論を重ね、最終的に合意に至る過程を目の当たりにし、国際機関における意思決定は、単なる多数決ではなく、異なる価値観や政策的優先順位をいかに擦り合わせ実効性のある合意へと導くか、という高度な調整の積み重ねであることを実感しました。そのような調整プロセスのダイナミクスに関心を抱き、その後、文部科学省において国際業務に携わる中で、国際機関での勤務をより具体的に志向するに至りました。
- ユネスコで働くやりがい・大変さはどの様なところにあるのでしょうか?
やりがいと大変さは表裏一体なのですが、文化的背景の異なる人々と協働することは、大変である一方、良い成果を生み出せたときにはやりがいを感じます。ユネスコ内の部署間の調整もさることながら、各国政府との調整、特に複数国が関わる案件においては、利害や立場の違いから調整が一層難しくなります。そのため、関係者全員が納得できる形を目指し、丁寧な対話を通じた調整が求められます。時には、関係者間の意見の相違により、思うように物事が進まず苦慮することもありますが、試行錯誤の末に前進できたときには、大きな達成感を得られます。また、多様な価値観に触れる中で、自身の価値観が深まり形を変えていくことが面白く、こうした経験が自身を成長させてくれていると感じます。
- これからユネスコでの勤務を目指す方へのメッセージをお願いいたします。
170カ国以上の同僚とともに、世界を一つの社会として捉えながら協働できることは、ユネスコで働く醍醐味です。また、常に広い視野で学び続け、社会の現状に対する理解を深めていくことのできる環境でもあります。採用は非常に競争的ですが、インターンやJPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)としての勤務を通じて経験を積み、正規職員として採用されるケースが多く、経験と挑戦がキャリアを切り拓くのだと思います。
皆さんの思いが実を結びますよう、心より応援しております。