ユネスコで活躍する日本人職員 森岡 文子(もりおか・ふみこ)さん
令和8年4月23日
- これまでのご経歴と現在のお仕事の内容についてお教えください。
2019年に文部科学省に入省し、2024年9月より、文部科学省からの派遣という形でユネスコで勤務しています。
文部科学省では、大学の質保証のための法令運用や制度改正、博士課程学生を含む科学技術人材の支援、トップレベル研究大学の構築を支援するための基金(大学ファンド)の創設といった業務に携わってきました。
現在は、ユネスコ教育局ESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)課という部署で勤務しています。ESDとは、おおまかに言うと、持続可能な社会の実現のため、社会課題の解決に向けて行動を起こせるような知識や価値観を育てることを目指す教育のことです。実は2002年に日本が提唱した概念であり、それ以降、ユネスコの主導により国際的に推進されてきました。
業務内容は多岐にわたりますが、特に大きなものとしては、「ユネスコ/日本ESD賞」という、ESDに関わる好事例の表彰を通じてESDの普及・推進を図る事業の運営があります。直近の2025年度には世界59か国・9NGOから多数のプロジェクトが推薦され、審査委員会による審査を経て選出された3件が、パリで行われた表彰式において表彰されました。その他、各国に「ESD国内実施計画」の策定を呼びかけ、計画の策定まで一国ずつ伴走支援を行ったり、専門家グループと協力してESDの取組に当たってのガイダンスツールを作成したり、ESDに関わる能力構築のためのイベントを定期的に開催したりと、幅広い業務に携わっています。
- ユネスコ(国際機関)でのお仕事を目指されたきっかけをお教えください。
新しい世界に触れることが好きという単純な理由で、高校生の頃から国際交流に漠然とした興味を持っていました。就職活動の際は国際機関で働くという発想がありませんでしたが、就職して以降、高校時代からの興味に加え、今後の社会では英語でのコミュニケーション力を身につける必要があると感じたことや、自分の幅を広げたいという思いから、海外勤務や海外留学に関心を持つようになりました。最終的には家族のパリ転勤が後押しとなって、ユネスコでの勤務を希望しました。
- ユネスコで働くやりがい・大変さはどの様なところにあるのでしょうか?
私のユネスコでの業務の特徴は、関係者の幅広さにあります。イベント一つとっても、登壇者、聴衆ともに数多くの国から集まりますし、例えばガイダンスツールの作成に当たっては、ESDの分野で国際的に活躍する研究者達から各国の学校の先生方、生徒の皆さんまで、全体で数百人に及ぶ人が関わることもあります。関係者が多い分、成果がまとまったときの達成感は大きいですし、取組の効果について多くの人からフィードバックをいただけるので、やりがいを感じます。
その裏返しとして、調整過程には時間がかかることも多いです。例えば、今後どのようなテーマを掘り下げるべきか、ガイダンスツールはどの程度の粒度にするべきか、いつどのようなイベントを開催するべきか、さらにはこうした議論はどのような順を追って進めるべきかというプロセスの面まで、国や立場によって考え方は大きく異なるので、ユネスコとしてどのように合意を形成できるかが問われると思います。
- これからユネスコでの勤務を目指す方へのメッセージをお願いいたします。
国際機関での業務も英語での業務も初めてで、慣れないことだらけの私でしたが、自分のネットワークや調整能力などの特性をどのように業務に生かすかを考え、上司や同僚の協力を得ながら業務を一つ一つこなしていく中で、手応えを感じながら働くことができています。ユネスコでの経験は、国際社会の複雑な仕組みや現状について理解を深め、その中で自分にできることを試す貴重な機会となり、自分を大きく成長させてくれていると思います。
国際機関のキャリアパスを歩むのは勇気やご縁がいることかもしれませんが、少しでも興味があれば、ぜひ一度足を踏み入れていただきたいと思います!