ユネスコで活躍する日本人職員 冨田 早紀(とみた・さき)さん

令和6年4月9日
Ms.Tomita 情報・コミュニケーション課 記録遺産ユニット   冨田 早紀さん
  • これまでのご経歴と現在のお仕事の内容についてお教えください。
 
 ユネスコの前は、文部科学省に勤めており、科学技術部局、教育部局、国際部局のほか、農林水産省での出向勤務がありました。
 現在は、Communication and information SectorのDocumentary Heritage Unitにおいて、記録遺産(記録物(Document)あるいは記録物群で構成され,コミュニティや文化,国,又は人類全般にとって重要かつ不朽の価値を持ち,その劣化や損失が甚大な文化的貧困を招くもの)の保護・アクセシビリティ向上に資する事業を複数担当しています。
 
 
  • ユネスコ(国際機関)でのお仕事を目指されたきっかけをお教えください。
 
 ユネスコを勤務先として意識したのは、人事異動の打診を受けてからでした。これまで、海外での勤務先としては、これまでリサーチの一部に関わることのあったOECDや、自身が元より抱いている将来的に研究支援に携わりたいという思いからJSPSなどを考えることはありました。一方で、ユネスコにも、Science SectorやSTS Sectorなどがあり、ユネスコ主催の展示会等の機会には、つくづく幅広い分野を所掌している国際機関であることに改めて気づかされます。現在の業務内容は、当初の自身の想定から分野・方向性は異なりますが、担当業務に向き合い、本分野の高い専門知識を持つ同僚との交流等を通して、本分野の奥の深さを一層学び、色濃くユニークな経験をしていると感じます。また、街中や日常に歴史や文化が根付くこの場所で、それぞれの国や地域のアイデンティティとも言える記録遺産の保全に向けた活動を発信していくことに大きな意義を感じています。
 
 
  • ユネスコで働くやりがい・大変さはどの様なところにあるのでしょうか?
 
 ユネスコは、加盟国の多さ故に地道な擦り合わせを繰り返しながらも、共通の大きなビジョンに向かって、道を示し皆で邁進するという姿勢が、特徴として見て取れるかと思いますが、私からは、現在担当している事業執行の観点から付け加えさせていただければと思います。現在、私は、必要な場所に、必要なサポートを届けることを目的とした事業を行っています。まさにユネスコの掲げるビジョンを軸として、如何に世界全体をより良くしていくか、そのために多種多様なニーズのある現場を如何にユネスコの立場としてサポートできるか、が問われていると感じます。ニーズ、つまりは、妥当性の考慮を含め、求められる事業のための資金の分配、そしてその後のフォローアップ及び成果の普及、が恒常的な役割ではありますが、まず初めに、各活動の中長期計画を見据えた上で、限りある資源を如何に効率的に使ってもらえるか、そして、活動が滞りなく進んでいるか、最終的に、望んだ結果が得られたか、とそれぞれに大事な観点があります。対象国が多岐にわたるところ、国が異なると、仕事上の文化、関連する物流等、取り巻く環境全てが異なるため、こちらの思い描いていた通りに進まないこともあります。そうしたときに、どのように各課題を解決していけるのか、部分的な軌道修正ないし、改善を如何に行えるか、を検討するには、該当となる国・地域の情勢・背景を考慮に入れる必要があり、一筋縄ではいきませんが、本事業による活動を糧に、当該地域で自立したサイクルが整い、ひいては、近隣諸国・地域への波及効果を生み、投資以上の効果を広く得られた際にはやりがいを感じます。
 また、最初こそ、日本の職場とは大きく異なる、組織としてのユネスコの業務や文化に驚いたものの、職場には、様々な経歴と知見を持つ優秀な同僚が揃っており、日々の情報交換や議論の中で、お互いを高めあいながら、日々の学びを随時、業務に反映できる環境も魅力に感じています。
 
 
  • これからユネスコでの勤務を目指す方へのメッセージをお願いいたします
 
 数ある職種、そして国際機関の中でも、ユネスコを勤務先として考慮に入れられている時点で、既にユネスコへの道は一つ拓けているのではと思います。
 ユネスコの雇用形態は様々ありますが、どういった形であれ、まずは一度、組織に入ってみると見えてくる世界があるかと思います。ユネスコ内には、多種多様なバックグラウンドを持ち、志を高く持つ同僚が沢山います。私自身、ユネスコでコンサルタントの採用を行ったことがありますが、能力、学歴、経歴ともに申し分ない候補者が揃っていた中でも、やはりその仕事にかける情熱が伝わるかどうかも大きなポイントだと感じました。ユネスコの採用情報は日本の外務省HP経由だけでなく、ユネスコHP自体にも多く掲載されています。常勤ポストが少ないという性質上、採用ポストの移り変わりも激しいので、目指すべきものがあるのであれば、まずは行動あるのみだと思います。自分の強みを明確にし、興味のある分野へのアンテナを張り、ぜひ自分の望んだ道へ一歩踏み出してみてください。